Barwise/Seligmanのチャネル理論(1997)は,タイプとトークンの間の関係としての分類だけでなく,タイプ間の制約としての局所論理を動員して情報の流れをモデル化しようとする試みである.チャネル理論は,すでに抽象設計論(角田・菊池) など多くの発展および応用を得ている.
チャネル理論の局所論理は,大域カット則を充足する理論を正則とする.なぜ大域カットなのだろうか? また,大域カットは通常のカット推論規則よりも強いが,有限の証明図および有限のシーケントに限定すればそれらは等価となるのだろうか?
この「保守拡大性」に関しては,選択公理を使って肯定的な証明が得られた.このようにチャネル理論の「重箱の隅」をつついているうちに,分類と情報射の意味と役割が次第によくわかってきた.大域カットのねらいも見えてきた.さらに位相空間(連続写像)や可測空間(可測写像),もっと身近な線形空間(線形写像)やオートマトン(模倣)など, おなじみの数学的構造がすべてチャネル理論の分類(情報射)であることが実感をもって確認できた.この実感の共有は情報をめざす多くの人とくに学生諸君にとっても有用であると信じる.なお,井出陽子氏の関連結果 (修士論文2011) にもふれる.